
急速拡大装置は、主に成長期の子どもに使用する固定式の矯正装置です。上あごの骨を左右に広げ、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを短期間で確保することを目的とします。
急速拡大装置の仕組み
- 装置の装着
- 奥歯に金属製のバンドを固定し、それを太いワイヤーでつなげた装置を装着します。患者さん自身では取り外しできません。
- ネジの調整
- 装置の中央には拡大ネジがついており、これを1日1〜2回、保護者の方が専用のキーで回します。
- ネジを回すことで装置が広がり、上あごの骨のつなぎ目(正中口蓋縫合)に力が加わり、骨がゆっくりと広がります。
- 保定期間
- 拡大が完了した後は、広がった状態を維持するために数ヶ月間装置をそのまま装着します。この間に骨が安定し、後戻りを防ぎます。
急速拡大装置の特徴
- メリット
- 抜歯のリスク軽減:顎を広げることで、将来的に抜歯をせずに済む可能性が高まります。
- 短期間で効果が出る:成長期の骨が柔軟な時期に治療を行うため、数週間〜数ヶ月で顎が拡大します。
- 口呼吸の改善:上あごが広がることで鼻腔も広がり、鼻呼吸がしやすくなることがあります。
- デメリット
- 不快感や痛み:装着初期は装置の違和感や、ネジを回した際に痛みを感じることがあります。
- 発音や食事がしにくい:装置が口内にあるため、慣れるまでは発音しにくかったり、食事がしにくかったりします。
- 自己管理が重要:ネジ回しを毎日行う必要があるため、保護者の方の協力が不可欠です。

ディスタルジェット装置は、上あごの奥歯(第一大臼歯)を奥に移動させるための固定式矯正装置です。抜歯をせずに歯を並べるスペースを確保したい場合や、出っ歯を改善する目的で用いられます。
ディスタルジェット装置の仕組み
- 装置の装着
- 奥歯にバンドと呼ばれる金属の輪を固定し、そこにワイヤーやバネで構成された装置を取り付けます。装置は患者さん自身で取り外すことはできません。
- バネの力で歯を動かす
- 装置には、元に戻ろうとする力を利用したバネが組み込まれています。
- このバネの力によって、奥歯を少しずつ後方へと押し下げていきます。
- 定期的な通院時に、バネの調整を行います。
ディスタルジェット装置の特徴
- メリット
- 抜歯を回避できる:奥歯を後方に動かすことで、前歯を並べるためのスペースを作り、抜歯をせずに矯正治療を進められる可能性が高まります。
- 高い治療効果:固定式であるため、患者さんの協力度に左右されず、安定した力が歯に加わり、計画通りに歯を移動させることができます。
- 見た目が目立たない:装置は主に口の内側にあるため、外から見て目立ちにくいです。
- デメリット
- 違和感や痛み:装置が口の中に固定されているため、慣れるまでは違和感や発音のしにくさを感じることがあります。
- 口腔ケアが難しい:装置に食べ物が詰まりやすく、通常の歯磨きだけでは汚れが残りやすいです。
- 治療期間の延長:奥歯を後方に動かすのにある程度の期間が必要なため、全体的な矯正期間が長くなる場合があります。